日本人の死亡原因の第1位は悪性新生物(がん)です。部位別では、大腸がんは増加傾向にあるがんのひとつで
男性では第3位、女性では第1位です。増えている主な原因として日本人の食生活の欧米化、つまり肉などの
動物性脂肪の摂取量の増加と食物繊維の摂取量の減少があげられています。
通常のがんの広がりが粘膜下層までにとどまっているものが早期がん、筋層以下まで進んだものが進行がんとなって
分類されていますが大腸の早期がんは2cm以下の小さなものがほとんどで自覚症状がありません。
定期健診の際に見つかることが多いのもこのためです。
原因 早期の大腸がんはほとんど症状がありません。
進行すると潰瘍からの出血や下痢、
便秘などの症状がでますが
がんの部位によって症状は異なります。
 
大腸がんの種類
分類
がんと痔の出血の違い 大腸がんの場合 痔の場合
注意点 第1 便潜血反応
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大腸がんは早期ではほとんど症状がありません。がんからの出血で目に見えない便の中の血液を検出するのがこの検査で、これが陽性の場合には注腸造影検査や内視鏡検査を行います。年に1回は健診を受けましょう。
  第2 直腸指診
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肛門から直腸内に指を挿入し直腸内に腫瘍(ポリープやがん)がないか調べます。
これにより直腸がんが見つかることも少なくありません。
  第3 注腸造影検査
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肛門から大腸内にバリウムを注入し、大腸の壁をレントゲン撮影する検査です。
がんの位置や大きさなどを確認できます。
  第4 大腸内視鏡検査
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肛門からの内視鏡を大腸内に挿入し、大腸の壁を調べます。ポリープやがんを直接観察することができ、がんの疑いのある病変から細胞を採取し診断したりもします。
内視鏡は観察だけでなく組織や粘液採取をはじめ患部の切除などの処置も可能です。
当クリニックでは1,2,4の検査が可能です
 
症例 ポリープ症例 ポリープ症例2
[1] 下行結腸中部に大きさ2cm前後の扁平隆起性病変を認めます。 [2] 同部位に色素を散布して隆起表面の性状を確認しています。 [3] このままでは内視鏡的摘除は難しい。病変を摘除しやすくするために粘膜下に生理食塩水など(またはムコアップ)を局所注射してスネアで締め付けて高周波通電しています。(内視鏡的粘膜切除術 EMR)
ポリープ症例3 ポリープ症例4
[4] 病変を切除した後の粘膜です。
病理組織検査結果で早期大腸がんと診断され完全に切除された事を確認しました。
[5] 1年後の同部位
内視鏡的粘膜切除(EMR)後の観察では瘢痕化しています。
 
 
注意点 内視鏡による治療法

内視鏡による治療法では、リンパ節転移がないと判断された早期がんが対象となります。開腹手術に比べて切除部位が小さく、出血や痛みも少ないため患者さんにとって負担が少ないことが大きなメリットです。切除した部分は取り出し、組織を調べ、場合によっては追加切除を行いがんの病巣を完全に切除します。一方、内視鏡治療には出血、穿孔のリスクがあるため、慎重な操作が求められます。

ポリペクトミー
隆起した病変にはポリペクトミーといって、高周波スネアとよばれる金属の輪の中にがんを取り込み、しばり、通電することにより切除します。

深達度での5分類

 

内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic mucosal resection):EMR
隆起していない病変、表面型の腫瘍にも内視鏡による切除を可能にした方法です。粘膜下層に生理食塩水などを注入することにより、病巣を固有筋層から浮かせて高周波を用いて切り取る方法です。

内視鏡的粘膜切除術

大腸がんに対して行われている内視鏡治療はポリペクトミー、EMRのほか、ホットバイオプシーといって、ポリペクトミーのように腫瘍をひっぱりあげ、把時し、高周波電流を通電することによって腫瘍を摘除する方法が行われます。

大腸の早期がんの初回治療では約60%に内視鏡による治療が行われるようになり、手術に比べて患者さんの負担が軽減し、術後の生活の質も向上しました


手術による治療

早期がんは開腹手術せずに大腸内視鏡で取り去ることができるようになり、早期大腸がん全体の約60%は内視鏡による治療を行うようになりました。しかし、大腸内視鏡で摘除できないないがんは、深達度、リンパ節への転移、遠隔転移(大腸がんの場合は肝臓と肺に転移する傾向)の3つの状態に基づいて切除範囲を決め、開腹手術を行います。


化学療法による治療

化学療法は手術後に残された可能性のあるがんをたたくこと、それとともに再発をふせぐことを目的とした補助療法と、手術不可能な場合の代替の手段として選択されます。


化学療法による治療

放射線療法は直腸がんに対して補助療法として行われています。がんに放射線をあて治療する方法です。


注意点 大腸がんの発生と食生活には密接な関係があるといわれています。 大腸がんのリスクをあげる食物としては、動物性の高脂肪・高たんぱくにかたよった食事・繊維食の不足・直腸がんではビールがあげられ、リスクを減少させる食物としては、穀物・豆類の繊維食・チーズ・牛乳・魚類の良質の蛋白質をバランスよくとることが奨められています。また、ビタミンCやEは発がん物質がつくられるのを阻止するともいわれているので積極的にとることを心がけましょう。
便秘は老廃物が長いあいだ腸に滞っている状態なので規則正しい排便が大切です。 定期的に検査を受け早期発見を心がけましょう。40歳以上、家族に大腸がんの人がいる、大腸ポリープがあった、潰瘍性大腸炎をわずらっている方々は特に注意が必要です。便に血が混ざる、便通の異常、腹痛など少しでも自覚症状がある場合には検査をお勧めします。大腸がんは粘膜にとどまっている状態であれば、ほとんどが完治可能と言われています。

食事や生活上の注意

 

注意点 第1 太り過ぎに注意する。
第2 腹囲の測定 腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上であるとメタボリック
シンドローム(内臓脂肪症候群)
の可能性があるので注意が必要です。
体重と併せて定期的に測る習慣をつけましょう。
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第3 動物性脂肪を取り過ぎない。
第4 アルコールはほどほどに。日本酒なら1合 ビールなら中瓶1本
第5 貯蔵肉や赤身の肉を取り過ぎない。
第6 適度な運動を心掛ける。ウォーキングであれば1日30分以上
第7 規則正しい食生活をする。
第8 規則的な排便習慣をつける。
第9 野菜や果物をしっかりとる。